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グッドジョブ本人

丁寧に生きている記録

きたがわ翔「NINETEEN」が復活すると聞いたおれは諭吉を手に立ち上がった

クラウドファンディングが活況です。このペースだとミュージシャンはもう普通にMV撮影費とかファンからの寄付ベースで制作するのが普通って世界になるん じゃないかとすら思います。コミックの事例もけっこう出てきたよねってことで

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 きたがわ翔先生、お久しぶりです!!!まじかーこんな再会かー。

私が鍵っ子だった小学生時代は、年の離れた兄姉の本棚とよく遊んでいたんだけれど、そこで清水玲子とツートップ張ってたのが彼でした。「B.B.フィッシュ」のエロ描写を隠れて読みながら、自分の奥底からじわりじわりと立ち上ってきた名前もなき湿り気のこと、説明はもちろん誰とも共有すらできなくて、今思うと本当に「きたがわァ!」てなる。

80年代に中学生で別マ作家としてデビューし、その後ヤンジャンに移った男性マンガ家・きたがわ翔。好きなアーティストは岡村靖幸!「反町隆史が主演の『ホットマン』の原作マンガ描いてた人だよ」と説明してようやくアラサー以上の人たちにだけわかってもらえるんだけど、違うんだよ。「ホットマン」なんて違うよ、全然違うよ。

彼の真骨頂は、おそらく自己投影と描きたいテーマが存分に発露できてたと思われるヤンジャン時代初期、80年代後半〜90年代前半の作品。「こじらせ」って言葉が初潮を迎えてすらいない頃からバンバン描かれてたナイーブな男子や身勝手な女子、デザイン校の出自が色濃い謎のポージング(彼の絵のあれこれは割愛)、自然と取り込まれてるバブルとトレンディドラマの雰囲気。「退屈な日常での出会いやら何やらを激情という概念で殴っていく」で片付けられる最近の青春マンガとは毛色の違う要素だけで構成されてる。たぶんだけど、いま逆にアツい。

彼の作品の中で2つオススメがありまして、ひとつが「C」というオムニバス作品。これはCすなわちCOMPLEXってことで、本作では4種類のコンプレックス物語が3、3、3、1巻で描かれてる。1〜3巻「男性失格」のインポお兄さん劇場と、4〜6巻の天才絵描きのルサンチマンストーリー「マゼンダ・ハーレム」こそきたがわ先生の真骨頂と呼びたい。「マゼンダ〜」なんてラストのカタルシスに長い間ときめいてたもんだから、モノを溜めない暮らし心がけてる今でも本棚にブッ刺さってるよ。

そしてもう1作こそ、今回のクラウドファンディングでやってる「19〈NINETEEN〉」ってトレンディ恋愛マンガの案件なんです。バブルの青学(✕セーガク)に代官山を足し、ゲイ店長がやってるケーキ屋でバイトするイケメン&気の小さい青年が女にモテるけど煮え切らない続きの中でポエムを編む最高最高最高の名作。これがヤンジャンで連載されてたとか本当に夢があるなー当時の日本。それが復活するってんだからもう即課金だよ今のおれ!説明文とか読むよ!

faavo.jp

30年ほど前、私の初めての週刊連載作品『19NINETEEN』が誕生しました。主人公のバイト先”do”という名前のケーキ屋を通して19歳の主人公とその恋愛を含めた日常を描いた作品の続編読切として、『19 FOREVER』は8年ほど前に発表されました。

割と評判が良くて、”この続編の連載を!”と編集さんに希望されていたのですが、なかなか自分的にうまく描けず、長いあいだ頓挫したままでした。

読切の主人公である久保田は四十歳過ぎてややくたびれた中年男になっており、結婚はしているが子供には恵まれておらず、体の不自由になった父の介護をしている、というかな~りリアルな設定になっていて、この久保田を主人公にしたエンタメ作品を連載で作ることは正直かなり難しかったのです。

描いても描いても自分的に納得がいかず、ずるずると年月だけが経ってしまいました。

それが最近になって、そうだ! こんなふうに描いてみたい! というひとつのアイディアが浮かびました。
それは脱サラしてケーキ屋の店長となった久保田のお店に成長したキャラクターたち(『19NINETEEN』以外の作品を含む)が入れ替わり立ち替わり訪れる、というものです。

ジュリアン・デュヴィヴィエの古いフランス映画、『舞踏会の手帳』みたいな感じで。

でも…皆様もお気づきの通り、これを現在商業誌で発表させてくれる場所はなかなかありません。

はっきり言ってこれは現在の読者様ではなくあの時代、私の作品をリアルタイムで読んでくださっていた読者様限定の作品だと言い切っても過言ではないからです。 

あっ、はい。これ、すごくジャッジが難しい案件じゃないすか…。

あの頃のマンガが加齢臭をまとって現在にバックアゲンした事例としては「東京ラブストーリーAfter25years」がすでにあって、あれまだ私は1話しか読んでないけど「ああ、こういう形のツーショットになるんだ!」って思えました。自然な感じや距離感が意外性ありつつ納得できたんです。でもなんか…ファンに向けられても…って思うんだけど……どうなんだろうな…!

実は私「ホットマン」あたりから彼の作品をほぼまったく読んでないです。キャラクターに共感できなくなって、絵だけが悪目立ちするようになっちゃって。数年前に「池袋ウエストゲートパーク」とか矢沢永吉「成りあがり」のコミカライズ描いてると知っていよいよ卒業した次第でした。だからクラウドファンディングでお声がけしてるって知り応援したくなったけれど、いや正直めちゃくちゃ迷った。しかも支援プラン1万円、7万5千円、100万円の3種類て…!先生、今バブルじゃないんだよ!CAMPFIREとかでいろいろ案件見てくれよ!!この値付けを見た瞬間にこっちは先生がよく描いてた「1ページまるごと使ってショックな表情」みたくなったわ!!!

 

と、思ったんですけどね。結論としては、わたし支援します。

 ヤバくないですか。久保田一至が今こんな感じなんですって。当時のほうが目元大人びてない?とかもちろんあるけど、なんか全然雰囲気違くて、すごくいいよね…それだけ一至にもきたがわ先生にもいろいろあって、今ようやく新しい物語を見せてくれそうやね……!ということでやりますよ私。やったろやないか。こないだ買った「HiGH&LOW THE MOVIE」豪華版Blu-rayですら超えなかった1万円の壁を、まだできあがってもいないものに出すんや。母ちゃん、あんたのお子さん大したもんや!今夜はジャンボ大盛りだ!!

実は100%自分の金で出費するクラウドファンディングはこれが初めてでして、支援に対し正直これだけ勇気が稼働するなんて思いもよらなかったなーという気づきも含め、2017年に私の人生がまた一歩進めた気がします。この先のことを報告するかどうかわかりませんが、2017年が少しでもいい年になるといいなと願って、第一報を終えます。

ぜんぜん関係ないけどこのツイートで「華麗なる食卓」のふなつかずき先生が熱めのリプを飛ばしていたので大変ぽかぽかしました。