グッドジョブ本人

いいものや面白いものがたくさんあふれていたよってことやんわりと残しておく

浜崎あゆみが20年もayuしてた

「開演時刻が大幅に遅れ、大変申し訳ございません」と場内MC。16時ちょうど予定が20分過ぎただけでこんなに謝るなんて、よっぽど色んな人に叩かれてきたのだなあと勘ぐってしまう。4月8日の日曜日、浜崎あゆみ20周年ツアー「POWER of MUSIC 20th Anniversary」2日目の話。ちなみに行ったら偶然その日がデビュー記念日で、入場時に「アンコールのときにサプライズでayuに歌を贈ろう!」ってチラシをもらったけど、開演前からアンコールがあることを教えてくれる貴重な現場に感謝します。

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以前「今日び毎日どっかでアニバーサリーですよ」なんて誰かが言ってて「確かに」と思ったもんだけど、その中でも浜崎あゆみ歌姫生活20年にはさすがに驚いてしかたない。きっと多くの人がそう思っているように、私も彼女のキャリアがまさかこんなに続くと思わなかった。

2000年代前半はめざましテレビなんかで毎週のようにayuがなんらかの新記録を樹立した的な話ばかりしていた。もちろん実際に浜崎あゆみ楽曲がたくさんの人に届いてたのは間違いないけど、自分を含めてあの盛り上がりを「単純にバックの太さを存分に活かした圧の強いメディア展開」とアレルギー反応を示した人は少なくないだろう。

そして2010年代。ayu作品のリミックス盤やベスト盤が何枚出たかわからなくなってきた今日このごろ、彼女こそが日本を代表するアーティストだと主張する人はそんなにいない。どころかソースの怪しい週刊誌記事やSNSのコメントをかき集めたメディアが事あるごとにayuをバカにする。そういう扱いでOKな人になってしまったなあ…そんなことを考えていたら、私は「ayu今どうしているんだろう」という気持ちを抑えられなくなっていた。

 

さいたまスーパーアリーナはしっかりと人が入っていた。ayuの単独を観に来たのは2014年末の代々木体育館カウントダウン以来で、そのときも満員。ayu現場はいつも「実はこんなに支持している人がいる」という驚き混じりの再確認から始まる。なんでかは知らんけどガイジン日本語調の煽りアナウンスがあり、そのあと客席からayuコールが自然発生。しばらくそれを聞いていると会場が暗転してコンサートが始まった。

公演は暗闇の中でいきなり全力浜崎あゆみ声でのアカペラから始まって、それが甲高い歓声と乳幼児の泣き声を誘う。Ayuはゴング即デンプシーロールみたいな感じでキマりまくっており、アカペラからストリングス、ロックバンド、フリーキーな格好のコーラストリオを従えて1曲目にしてX JAPANのフィナーレみたいなダイナミック世界を即納した。しかもそこから「威風堂々」をブレンドして大河ドラマみたいな「evolution」になだれ込む荒業まで仕掛けてくるので、4月前半なのに早々で汗だくになってしまった。

その後もコンサートでは「A song for xx」「SEASONS」はじめ「おれでも知ってる!」みたいな曲がどんどこどんどこプレイされ、観客の過半数が挙げるピンク色のペンラとセットでいい思い出みたいなハイライトシーンをいくつも作り上げてくれた。当時まったくといっていいほど関心を持たなかった自分なのに、こんなに知ってる曲があるんだねというところに彼女の“国民的”を感じる。

個人的には納得いっていないところもある。今ツアーはayuの「立ち止まることなくまだまだ前進し続ける覚悟を決めた音楽人生」を表現したものだそうで、前述のオリコンも「“原点回帰”を意識し、ダンサー・パフォーマーたちの派手な演出は控え目に、バンド・コーラス・ストリングスを中心とした」と書いてたけど、全然そんなことなかった。コンサートはayuが3曲くらい歌ってから退場し5分くらいインターバル取ってを繰り返す、その幕間にダンサーパフォーマー大活躍という内容で、何が「演出控えめ」だ?しまいには浜崎あゆみじゃない歌(従兄弟の曲)をサポートボーカルがフルで歌うとかは「オッ誰現場です?」となった。

 

そんな「POWER of MUSIC(ただし本人とは限らない)」的な、MUSIC部分に異議ありの夜ではあった。だが、並々ならぬ「POWER」をひしひし感じた夜であった。

「Boys & Girlsこの部分まったく歌わないかー」って感じで当時と比べて明らかに歌唱力は落ちた2018年の浜崎あゆみが、よっちゃんはじめチームの力を借りながらゴリ押しでパフォーマンスを成立させようと奮進する姿、それは00年代の広告出稿よりもずっと好ましい“POWER”。繰り出される展開の読めなさは振り返ってなお痛快だった。楽曲を歌いながら高まりすぎて涙する浜崎あゆみ、あーりんも真似た独特の煽り方を繰り出し続ける浜崎あゆみ、四つん這いで獣のように荒ぶるぜ浜崎あゆみ…!ああ、ayuッッッッ!!!てなる。

今はなきチケキャンなど、中古チケット市場で浜崎あゆみの相場を眺めていると、そこに面白い現象が起きていることがわかる。だいたいいつも「売ります」が叩き売り状態で、「買います」はアリーナ前方を希望する異様な高額リストがある。「売ります」には転売気分マンの惰性が、「買います」はどうしてもayuを至近距離で感じたいという強すぎる欲求(と異常な金銭感覚)がそれを作り出すんだろう。実際にさいたまスーパーアリーナでの求心力は、単に大箱だからと片付けられない強さがあった。

浜崎あゆみは今も歌姫だ。世間がめちゃくちゃ彼女を面白がってるけれど、お前らや私が知らない日本のどこかで、今日も全力でayuたる玉座にいる。あるいは、Team Ayuのメンバーと一緒に浜崎はayuという箱物の世界を守っている(ちな現場ではダンサー個別にファンがついててビビった)。なりふりなんてもうかまってない。ファンのためかチームのためか彼女自身なのか知らんけど、浜崎あゆみが全身で守っているその世界は必見の価値がある。

やあほんと今こそ浜崎あゆみを観よう、20年もAyuしてる浜崎あゆみを。ayuのことバカにしてるお前らどうせ彼女が引退を宣言したらポエム書くんでしょう?なら今のうちに観てくれ。今回のツアーはヒット曲満載で「宇多田ヒカルのカバーが一番の目玉」とか言われてた頃の公演よりは絶対に間口が広いから!たのむぞ!と言おうと思ってたら5月6日に代々木公園フリーライブあるんですね。みんな絶対に行けよな、約束だ。

natalie.mu