グッドジョブ本人

丁寧に生きている記録

負けない夜の始まり。THE YELLOW MONKEY2017東京ドーム公演初日を終えて

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THE YELLOW MONKEYの東京ドーム2デイズ公演の初日が終わった。スタートしてすぐ「オッ市民ホール用の規模感で機材見積もったやつかな」と唖然とするくらい音量と演出がミニマムだったのだけど、音は徐々に調子が良くなり、演出も「最初から言えよ!」とツッコミたくなるスケールアウトで最終的に優勝へ。波のように心を打つシーンが何度も何度も押し寄せ、大変忙しく心を動かした夜だった。

イエローモンキーって本当こうな。どこかうまくいかないところがあって、それコミのブツを彼らは届けてくる。大復活の昨年を経て迎えた今年は初演で吉井和哉が声を枯らし、ドキュメンタリー「オトトキ」は「これはオムニバス形式だから」と思い込まないと安心できない良エピソードぶつ切り映画だ(瞬間瞬間では超感動する)。過去にも解散の引き金となったツアーで「このツアーは失敗」とMCで言ってしまうところや地雷男告白文みたいな吉井の自伝など、あらゆる形でいちいちざわつかせてくださる。華やかなステージ上から届く、いらんカットふんだんのディレクターズカット版。格好よくてきれいなものだけを親しんでいたい身にとって試練のような感じな!と思うことが多い。

その上で「ああ、それでもいいんだな」という気づきをくれる存在が、2016年から再始動したこのバンドだ。彼らはその再結成自体も含め、決してうまくいかなかったあらゆることをライブや作品でどんどん清算していった。今回の東京ドーム公演だって休止前ラストライブの地であり、その数年後に解散発表を行った展示会場だ。自ら「トラウマだった」というその場で、およそ17年越しになる再開の約束をちゃんと叶えた。それも、終わりが見えていた時期に作った希望の歌を添えて。順当な解決よりも結果オーライにしてみせるその姿は、いいことばかりじゃない毎日ですねを痛いほど味わってきた僕にはこの上ないものとして響いてくる。

ロックは死ぬ。27歳でも、40歳でも死んでしまう。でも、それを越えたって我々は生き生きとした存在でいていいよ。不思議な力で全然優勝できてしまう可能性に満ちてるんだぜ。――そんな成功モデルが、あの50代のバンドだ。さあ今日は東京ドーム最終日、きっと音もよくなっているのだろう。負けない夜が今日も待ちきれない。

迎え撃て最強の母子

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結婚しました。お子も来年5月にリリース予定です。

相手とは7月から交際を開始し、いろいろ遊び散らかしていく中で、その人のコンテンツ力にどんどん惹かれていってこうなった形です。特に印象深いのは高知のよさこいに行ったとき。急にいなくなったと思ったらバイブス高めのチームの演奏に体をもってかれたらしく「全力で遊んでましたすいません」ってヘラヘラ戻ってきて、その姿を見て「最高だ!」と思いました。なんてわかりやすい生命力だろう、この人とならば先々もめちゃくちゃ楽しいことになるぞと。

そんな調子だったので、いつ何が起こってもOKみたいな気持ちでいました。そしたら9月、ふたりで暮らそうと準備してた1週間前に第3の人間がアップ始めてるのが明らかに。はええ。そして互いの両親にアレして交際4ヶ月目で入籍し、いわゆる安定期に入りましたので、ここに発表する次第です。お子は汎用ヒト型って形状してて早くも強そう。

電光石火のお付き合いから生じたものなので、未だに「はー、マジかー!」と驚いています。そして同時に、この直感のしっくり来るぶりに安心してもいます。ただ結婚は二度目なので手続き余裕と思ってたらそうでもなかったし、インターネットの出産育児というジャンルは未開拓過ぎることに絶望もした。あとインターネット的なところで言えばもう性別も隠せないでしょう。特定されたくなさでアレしてたけど僕はもう男、父という目線でしか何かを話せない。でもいいのだ。

人生は何が起こるかわからないものだねと口ぐせのように言いますが、この四半期いよいよそんな感じです。だがしかし、何が起こっても、それが必ずしも良いものでなくたってもひとつドーンといってみたい。そう思えるパートナーが妻で、しかも我々の遺伝子を継ぐすげーのが春に出てくるぽいです。楽しみです。みなさま、今後ともご指導ご鞭撻よろしくお願いします。

ECD IN THE PLACE TO BE

度肝を抜かれた。昨日のDOMMUNE「ECD IN THE PLACE TO BE:21世紀のECD」7時間スペシャル。スチャダラパーが「この曲(テーマPT.1)をECDに認められて世界が変わっていった」と話したのと同様に、YOU THE ROCK☆とDJ YASが、K DUB SHINEが、田我流がそれぞれ気持ちの入ったパフォーマンスを届けた。

でも、この日のベストアクトはECDのDJだった。

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選曲はアニメ「さすがの猿飛」EDテーマ、ブレッド&バターのスティーヴィー日本語カバー、プリプリの「DIAMONDS」等ジャンプ力高めとか近田春夫関連にSUICIDEといった浸透圧高めで楽しませていく感じ。で、その中に、「また逢う日まで」の英語カバー、水戸黄門のテーマ、「タイムマシーンにおねがい」といった曲が放り込まれ、いちいち強力なインパクトを与えていった。

EDM DJのパフォーマンス、メンバーの欠けたステージ、ライブビューイングなどなど。私は鑑賞するときに「これ、本来の何%分くらい楽しめているだろうか?」などと考えることがある。もとのものから何チャネルか経由して刺激が薄まっちゃってやしないか、いやしてるだろうなという懸念だ。

なのに私は、この日のDOMMUNE、やせ細った体のECDによるDJプレイをテレビ越しに、まぎれもないライブとして観ていた。マイクを持ってすらいないのに、彼が7inchで回す“出会いと別れと人生”の歌はこの日、完璧に彼の歌だった。ていうか彼が歌っている「君といつまでも」のリミックスも回してた。改めて聴くと、この日のためにレコーディングしましたと言っても信じてしまうくらい、あの場で歌うべき必然性のあるリリックが刻まれているじゃないか。

君といつまでも(Together forever Mix) feat. ECD×DJ Mitsu the Beats

君といつまでも(Together forever Mix) feat. ECD×DJ Mitsu the Beats

  • ECD×DJ Mitsu the Beats
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 レコードを無骨に切り替えながら、時折ブースから隠れるほど背を折って咳き込みながら、人様の歌に自分の言葉を憑依させたみたいなプレイ。「ライブ感のあるDJ」とは別種のパフォーマンスだったな、あれは。BASEさん、買いますんで復旧よろしくお願いします。

スピッツ30周年ツアー野外公演は人生のクライマックスだった

スピッツが今年で結成30周年を迎え、現在はアニバーサリーツアー「SPITZ 30th ANNIVERSARY TOUR “THIRTY30FIFTY50”」を行っている。本日も日本武道館はすごいことになったことだろう。

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私は「アリーナ会場でのフェス」というコンセプトのツアー「FESTIVARENA」で選曲の妙にヤラれてスピッツ熱を再燃させ、つい昨年もド傑作「醒めない」にグッときた関係で旅行ついでの沖縄ツアーファイナル遠征を果たした。そのときに草野マサムネが今ツアーをぼんやり予告したので、自分は今ツアーの予算をさっそく確保。そして年明けてめでたく今ツアーが発表され、私は「8月11、12日の香川・さぬき市野外音楽広場テアトロン公演しかない!」と即決した。

スピッツ、アニバーサリー、真夏、野外

香川を選んだのは首都圏での争奪戦を避けたというのと、ツアー唯一の野外公演だということがデカかった。しかも夏休みだぞ?!

そもそもテアトロンは、ももクロのイベントレポ写真で知っていた場所だった。古代ギリシャの野外劇場を模した造りで、ステージ背後には瀬戸内海が広がっているという贅沢ロケーションがなんとも素敵じゃないかっていう。アメリカにRed Rocksという岩山切り出し型のすばらしい野外ギグ場があるけど、日本だったらそこに海とうどんまで付いてくる!香川ァ!最高の思い出つか!!!!ってなるよな。この写真見て何も感じなかったらその感性は嘘だよ。

http://www.city.sanuki.kagawa.jp/wp-content/themes/sanukishi/img/sightseeing/theatron.jpg

http://www.city.sanuki.kagawa.jp/sightseeing/sights/oogushi/theatron

順路の絶景

ライブ初日は当日昼すぎまで高知でよさこいを楽しみ、レンタカーで四国の右上のほうへと向かった。「さぬき市というからにはうどん食べてみたいよな」みたいな話を車中でしながら高速降りて渋滞にIN。結局なんで混んでいたのか最後までよくわからなかった長蛇を30分ほどで抜け、臨時駐車場に到着する。車を降り、香川の空に「ヌケ感すごい!」とびっくりしたり「8823」ナンバーの青い車を見つけてニヤニヤしたりとさっそく忙しかった。

駐車場からシャトルバスで揺られること30分弱。下車した先の小高い丘には、またもや入場までの長蛇の列が発生していた。開演まであと15分位だというのに勘弁してくれよ…と思いながら、列がどれほど伸びているか様子を伺って、そこで「うわわわわ…」と情けない声を上げてしまった。

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こんなの冗談じゃない。雲がなかったら吸い込まれそうなくらい圧倒的にポッカリと広がる空と、波が見えることでギリギリ水ってわかるといっても過言じゃない瀬戸内海。東京だったらこの絶景だけでも目的地になりうる。それがライブ会場の手前だなんて本気でどうかしてると思った。この場に来るまでチケ代とは別に駐車場2500円にバス往復1800円だったぜクソがなんて言ーわない♡

結局、開演時間をけっこう過ぎるまでスタートは延び、おかげさまでライブは最初から観ることができた。

#最高の夏になりすぎたな

筆舌しがたいライブのこと、たくさん書いていきたい。選曲は2日間とも「ベストアルバムを携えた周年ツアー」としか呼びようのない高火力で、まるで童貞が好きな子のために作ったカセットテープのようなド直球ばかり。しかもプレイされる曲の一つひとつに「ああ、あの人とカラオケに行ったときにこの曲歌ってたな」「CDTVで / WOWOWで / あのドラマで、この曲リピートしていたな」とこべりついた思い出を消化しきる余裕なく次の思い出が襲い掛かってくるみたいな流れだ。

その上このギグでは、テアトロンが大自然をフルに使って攻めてきてた。会場後方の林から届くセミしぐれがスローナンバーの静かなイントロなどにコラージュしてくるわ、空は楽曲ごとに色や雲の形を調整してくれるわ、しまいには瀬戸内海を泳ぐ船が激しい曲中でも悠々と動いたり夜にポツリポツリと明かりを灯したりして楽しませるわ…会場一帯にあるすべてが特別な時間を作るための装置として相互作用した。ラーメンどんぶりを真っ二つにしたような急勾配の客席に埋まる公称1万2000人のオーディエンスも私と同じく思い思いに楽しんでいて、それもまた高揚につながる。

「スピッツには夏向きの曲がない」と苦笑しながら音頭のリズムで「チェリー」を一節歌って観客を笑わせつつ、そこから「音頭にしようがない歌ですが」と彼らの代表曲を不意打ちにプレイしてくるなど「もう堪忍してください」と感情がクタクタになるような選曲でしっかりと楽しませた3時間。アンコールが終わってメンバーが去り、いやいやこれは生涯で五本の指に入るレベル、ってか我が生涯の沿革に刻まれそうな大イベントだ、最高の夏になったなと隣に話しかけようとした瞬間。すべての照明が落ち闇に染まる。そして上がる無数の打ち上げ花火。私の隣人は「もう無理!」とむせんだ。大丈夫、おれも無理だ。こんなのオーバーキルが過ぎるよ。

スピッツが好きでよかったという2日間

初コンサートはスピッツだ。私は「ハチミツ」というアルバムにのめり込んだことと中1マンの「ライブというものに行ってみたい」という体験欲求を絡ませて、ぴあ欄外の個人売買コーナーでペアチケットを購入。当時まだサブカルチャーという名前すら知らないままに「本流とは違うカッコよさ」を話せる異性の友だち(クラスに馴染めてない転校生)を誘った。恋心などもちろんないのに、自宅の電話から「行かない?」と言って初めて「あっこれいわゆるデートの誘いくさい?」と急に恥ずかしくなったりしたのに、結局前日に「やっぱりやめとく」と断られた。そして名古屋市民会館大ホールにて隣を空席にしたまま聴いたスピッツ。帰宅したらテレビでドラマの第1話が流れていて、主題歌はその日のライブのラストチューン「空も飛べるはず」だった。

それから私は今日までおそらく1000を超えるステージを観て、いろんなところに心を動かされ続けてきた。ボーカルの技量に感嘆の声を上げた夜も、解散ライブで涙した日も、フェス会場後方でベロンベロンになって大合唱を楽しんだ時間も。

そしてようやくたどり着いた30周年スピッツは、本来の「楽曲の良さ」に加えて「それらへの自分の思い入れ」を足し、さらに「環境」「環境」「環境」「環境」…とドラを鬼乗せした、数え役満みたいなライブで来てくれた。ただ感謝、ただ感謝である。

もちろんそんなことはない、ないはずなんだけど、まるでこの公演はこれまでずっと好きで聴いてきた自分が祝福されているかのような気持ちでいる。ごほうびのような時間を泳いだ香川の2日間だった。

CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-(期間限定盤)[3CD]

CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-(期間限定盤)[3CD]

 
CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-

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スピッツ ソングス

スピッツ ソングス

 

 

ナオト・インティライミ入門

ブラジルで世話んなった宿のオーナーが来日するってんで、同宿だった面々集めて渋谷で呑んだ夜がありました。楽しく話して店を出て、一本締めでもやりますかってタイミング。「わ!久しぶりじゃん!!」といきなり現れた青年、なんと過去にその宿に泊まってたんですって。で、彼は我々の大団円ムードをまっすぐに破壊して宿主とひたすら話し続けた。そして周りでうろたえる私達はちっとも締まれずで…そんなことがありました。約10年前の話です。彼は今、ナオト・インティライミとして活躍しています。

誰か彼の歌を聴け

ナオト・インティライミは変だ。映画「旅歌ダイアリー」の面白エピソードや先の話から漂うマイペースさもそうだし、ペルーの祭りの名前を拝借したアーティスト名も、それを「プロデューサー・インティライミ」「ドラマー・インティライミ」などとアルバムクレジットなどに印字させる徹底ぶりもそう。そんなだから彼は評論家ネット廃人たちからことごとくいじられてきた。

でも私がもっとも違和感を覚えていたのは、彼というよりその周囲。なんで誰もナオト・インティライミの楽曲には明るくないわけ?彼の「粉雪」や「Stay Tune」がどれか、ファン(・インティライミ)以外で挙げられる人おらへんやん。そう不思議に思っていたタイミングで、彼が音楽との向き合い方を取り戻す(?)べく世界へ旅に出るとか言い出した。

ならば。この機会に私も彼の音楽と向き合って、知りたい。こうなったらとことんで、彼の音楽も肌で感じるべく、凱旋ギグとして7月10日に愛知で行われる「ナオトの日」記念ギグにも行こう、と決めた。

旅のインプットとアルバムのアウトプット

いろいろ書いたけど実際のところ純粋に興味もあって。彼はブラジルやトリニダード・トバゴなど、私が音楽的に興味を持って旅行した国にことごとく渡航していたんです。同じキセキ(軌跡)を持つ者として、彼がどんな音楽を創るのかめちゃくちゃ知りたかった。なのでまずはオリジナルアルバムをすべて聴くところから私の“旅”がスタートした。

※インディーズ作品やソニーミュージックでの初回デビュー期のものは割愛。「ナオト・インティライミ」としてユニバーサル・シグマから出たオリジナルアルバムだけを追っています。

1st「Shall we travel ??」(2010年7月)

しょっぱなからタイトル「旅」。内容も「世界を股にかけた男」として売り出したいんだんろう、ラテンアメリカ発祥のジャンル中心を取り入れたナンバーが点在するバラエティに富んだものになっている。シングルの「カーニバる?」は湘南乃風「睡蓮花」とかのタッツカタッカ速いビートが特徴的なトリニダード・トバゴのパワーソカを取り込み、次の「HOT! HOT!」にはレゲトンとかでおなじみのカリビアンビート曲。かと思えばアコースティック弾き語り、スローバラード、四つ打ち…なんていろいろ忙しく、ファーストアルバムにしてすごく楽しく聴ける作品である。ちなみにスパイスの効いた楽曲のアレンジは、だいたいモーニング娘。「ブレインストーミング」はじめハロ曲でヤンチャしてる大久保薫が担当していた。

Shall we travel ??

Shall we travel ??

 
2nd「ADVENTURE」(2011年5月)

「旅」から「冒険」にタイトルが変わったけれど、曲調としては保守的なJ-POPの“いい曲”が大量に流し込まれた感のあるセカンド。中盤「おまかせピーターパン」を投入して初めてカーニバルでかき回すまでひたすらスタンダードなJポップだし、終盤にレゲエフレーバーのラブソングが来るので、本作を通じて「ああナオトは世界に出なければ駅前で弾き語りしてる系の人か」という印象を強くした。

ADVENTURE(通常盤)

ADVENTURE(通常盤)

  • アーティスト: ナオト・インティライミ,常田真太郎,SHIKATA,O-live,大久保薫,Soundbreakers,REO,小山晃平
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル シグマ
  • 発売日: 2011/05/11
  • メディア: CD
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3rd「風歌キャラバン」(2012年4月)

冒頭の曲からエレクトロサウンドで、ナオトの声もオートチューン加工が。ほかの収録曲もいろいろとシンセが強調されていて、“ダンスナオト”の幕開けとなる1枚…だけど収録シングル「君に逢いたかった」「愛してた」に関してはひねらず至極まっとうなJ-POPラブソングで、そこらでいちいち揺り戻されるような感覚に陥る。

エッセイやブログ読むとナオトが常に迷いと戦っているマンだとわかる。なので本作を聴く間は「彼はレーベルやファン(・インティライミ)の求めと自分のやりたいこととのギャップに悩んだろうな…?」と想いを馳せがち。 

風歌キャラバン(初回限定盤)(DVD付)

風歌キャラバン(初回限定盤)(DVD付)

 

4th「Nice catch the moment!」(2013年5月)

Jamiroquaiのアレでも始まるのかと不安にさせるイントロ→地声スキャットによるオープニングが刺激的。2曲目のトロピカル&ダンスミュージックな「Brand new day」続く「恋する季節」も純然なJメロにミドルの4つ打ちが組み合わさって小気味よく、真ん中にバラードを置きつつも後半に再び「Ballooooon!!」でブチ上げるなどギアがわかりやすく入ってくる。前作の心地悪さ、初作の散漫さがなく、ナオトの器用さと「オマットゥリ男(自称)」らしさがめちゃくちゃいい形で出た良作。いやほんとめちゃいいわこの作品、一番売れた盤だし。ヘブン状態みたいなジャケも好き。

Nice catch the moment!(初回限定盤)(DVD付)

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5th「Viva The World!」(2014年10月)

5枚目にして「世界」を口にしたマン。サウンドがやたらきちんとし出してJ-WAVE感がすごく、「The World is ours!」で「ああサッカー好きだもんな」というようなアンセム感のある曲を出しつつも突き抜けたリズムは一切なく、かといって内省的でもなしという異様にモニャる1枚。向こう側の景色が描かれた壁を前にハンマーを手にするナオト、というのがすごく漂わせてる。

Viva The World! (初回限定盤)(DVD付)

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6th「Sixth Sense」(2016年9月)

最新作。彼はコレ作った四半期後に旅立った。前作同様に突き抜け未満で、毎回コンスタントに取り入れてきたような外国の音がほとんどない。演歌 ✕ ヨーロッパな短調曲「sayonara」とか新機軸はあるものの主役にはならじで、それ以外のものは以前聴いたね…っていう停滞感がすごい。快作「Nice catch the moment!」前に旅によるインプットがあったって前例を考えると、私でも本作のリリースギグ後即旅だな。 

Sixth Sense(初回限定盤)(DVD付)

Sixth Sense(初回限定盤)(DVD付)

 

と、6枚を一気に聴くことで彼が自分の手でどんな楽曲を作り、旅からどんなものを得るのかがぼんやりと見えてきた。なので凱旋公演はそりゃもう豊穣に満ちた素晴らしい公演になるだろうと確信した。

迎えたナオトの日とその誤算

もうすでにツイートしているので結論から先に言う。超やっちった。

 「ナオトの日 スペシャルLIVE 2017 〜おまたせ、おまかせ、おまっとぅり!ウェルカムバックでナオトの日!〜」の難易度は高かった。ホームに帰ってきたのに、味方一つ付けずバックパッカーノリのライブだった。

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開演時間を過ぎて照明が暗転。会場の外から物販やモギリブースを冷やかしながら旅人の格好で向かってくるナオトの様子が“中継”され、会場が沸き立つ。彼が男子トイレでゆっくりズボンを下ろし、それをナオトの声のナレーションが「ちょっとー?!ライブ前だよ!!」とツッコミの声が入るという“中継”というか寸劇が10分ほど続き、彼が一般の入り口からステージに。

「ごめんな!待たせたな!」ある種期待どおりの、ナオト劇場が開幕。正方形のステージの四角に置かれた4種類の帽子を眺め「(ベレー帽見て)いい絵が描けそうだけどこれじゃねえw てかどうやってインティライミになるんだっけ?」などと茶目っ気たっぷりに魅せる魅せる。 

ああ、音だけをとは言いながらも抗えない。私はナオトのこういうところが苦手だ。言葉選びのノリは特にしんどい。「ウタ」「キミ」みたくカナ表記で詩性を付けてくる古風な感覚もだし、「〜しちゃう系?」「〜のヤーツ」みたいな体育会のノリが生理的に受け付けない。ねえ本当に「オマットゥリ男」を自分の二つ名にしていいの?なんて思って、彼の元気に反比例して私はゴリゴリに下がっていった。

圧倒的なナオト

「ただいま!このただいまって気持ちをどうやって歌ったらいいんだろうな?」なんてうそぶきながら、ノープランギグがスタートした。「どうしようかなー?アレだな―?」なんて言いながら、ナオトは「ちょっとみんなの声聞きたいな?」とCコードから始まる即興メロを展開。「エーオー!」とコールアンドレスポンスを仕掛け、アリーナ会場360度がたちまちひとつになった。

あっそうだ思い出した。ナオトこういうところすごい。何年か前の国立競技場クローズセレモニーギグの日も、最初「誰やこいつ…」みたいな雰囲気のところを突如「雪だるまつくーろー」と当時上映された映画の節を入れて一気につかんだのだった。

で、それ以降の演目は…正直なところ、単にストレートな弾き語りライブだった。「お初インティライミはさ、これがナオト・インティライミのライブだって思っちゃダメだよ?」なんて言われてもおれ来ちゃったしなーと思わされたり、事前に募ったリクエスト用紙を箱から出しておきながら「はいはいはい、こっちね?あーでも今は違うなあ」と結局選り好みする様子にマジかと驚いたり。めちゃくちゃ俺様感があるな、と思ってやまないけれど、これがナオトなんだな。

ナオト、やっぱり強引だった。ここまで費やしておいてアレだけど、知ってた。次のアルバムには期待している。でも、それに伴ってまた振り回される体力があるかどうか、今の私にはちょっと判断が難しい。

E-girlsを聴くと元気になれた

数年前、具体的に何のタイミングか忘れたけど、心底疲れ果てていた時の私にいきなり元気をくれたのがE-girlsだった。大量のシュッとした女子が、火力強めで歌って踊る。カラフルな衣装に身を包み、大人数を活かしたお雛様みたいなセットのMVで極上のエンターテイメントを魅せる。LDH所属ガールズグループDream、Happiness、Flowerの3つと同社経営ジムEXPG出身の女の子たちで構成されたE-girlsは、アップテンポな楽曲とその存在で私を圧倒的に助けた。

クイーンビーの暴力的な元気

彼女たちの魅力は、とてもカジュアルに視聴を楽しめるところにある。K-POPガールズグループにインスパイヤされた軽快なサウンドもそうだし、性的なものを感じさせないで元気だけ届ける感じも気味がよい。さらに私にとってラクだったのが、彼女たちの発する言葉にいい意味で情念が込められないところだ。例えばシングル「ごめんなさいのKissing You」の歌詞。

一緒に食事しただけよ 彼はただのトモダチ 信じて!心配させること何もないの
I'm sorry 私が悪いね Oh my god 怒ってるよね お願い!話だけ聞いてダーリン

言葉では足りない感じ? エスオー エスオー エスオー エスオー SOS
反省はしてるけどね ギミー ギミー ギミー ギミー Forgive me

ごめんなさいのKissing you 言えないからほんの気持ちです♡
あいまい?でもDon't stop!Daring Stay with me 大好きよ

ごめんなさいでOne more chance 早くしないと泣いちゃいそうだよ
逢いたい もうCan't stop!弾けそうなこの気持ち

謝罪スタートなのに、いつのまにか震えておねだり。じゃじゃ馬にも程がある。中央線ならサイコパス扱いされてもおかしくない身勝手さを、中目黒は体育と音楽で嫌味なく着こなしている。布団かぶって「東京にしかアンダーグラウンドない」と教わるより、おんもに出てパーッとチャラつきたい時が人にはある。E-girlsの歌はそんなタイミングにもってこいの存在だった。

そう、とにかく強い。E-girlsはスクールカースト頂点、クイーンビーならではのパワーを体現した。繊細さを置き去りにするもんだからライディーンの無謀なカバーとか平気で来るけど、それに対するサブカルのおむずがりなんて知ったことではないのだ。だって彼女たちは一人ひとりがダイアモンドとして自分らしく輝くために生き、口を開けば「私たちはヴィーナス!」なのだから。リアルとか履いてる履いてないとか関係なく、とにかく明るい。そんなものを聴いたら刺激されるしかないじゃない。

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しかも、明朗な元気さの裏には、DreamがパッとしないデビューからHIROさんに拾われて客ゼロのインストアなどを経てようやく花開いた背景、EXPG内でもEGに入るための熾烈なピラミッドバトルがあるとか、泥臭いストーリーが目白押しってところもグッと来た。ストーリーラインに乗って、夢中は加速する一方だった。

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http://expg.jp/diamond/

 

 

晩期E-girlsに見られるLDHのオンナ冷遇体制

こうして私の中でE-girlsはどんどん存在感を増していったけれど、それにしたって彼女たちはいつまで経っても「金髪の子がいてフォロミーフォロミー言ってるアレ」の域を超えなかった。

もちろんそれは聴衆の評価だから仕方ない、いつかみんなもチャンくるといいよねと思ってきたけれど、昨年あたりから運営側のフックアップすら明らかに薄くなったみたいだった。サイト上の「大切なお知らせ」だけで辞めていくメンバー、2枚組アルバムといえば聞こえがいいが実際詰め込みっぱなし感あった「E.G. CRAZY」…極めつきは2016年をもって3人になったはずのDreamが、この春までずっと4人のアー写のままという前代未聞の宙ぶらりんな感じ。2016年いっぱいでErieがパフォーマー引退だってのに紅白ノータッチだったし、なんなのもう!

あとみんな大好きHigh&Lowでも苺美瑠狂というレディースはモブ扱いで、テーマソングの歌詞は全力で男尊女卑!おい輝きはどうした!

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そんな調子で「馬鹿野郎!ダイアモンドがどうとかいうんならDream Amiって名乗って過活動させる前にDream情報更新してくれ!」と声を上げそうになっていたら「E-girls、6月5日に「大切な発表」」というニュースが届き、「E.G. Evolution」というプロジェクトのもとにピンで活躍できそうな子を独立させる、実質グループ解体の報である。マジ終わった。

輝く花道、有終の美

そんなこんなで暗澹たる気持ちで迎えた、昨日7月16日の19人編成E-girlsラストステージ。ライブは約10分のE-girlsヒストリームービーののち、ラストシングルの「Go! Go! Let's Go!」からスタートした。

19人はフード&ガウン姿で長い長い花道を練り歩き、「E.G. CRAZY」の強めオンナなパフォーマンスを展開。そして曲の終わりで上着を脱ぎ、ステージで横一列になる。壮観な布陣を前に、ようやく盛り上がってきたこちらの気持ちをどんどん煽るようイントロを壮大に引っ張って、彼女たちは巨大なミラーボールの下で「E.G. Anthem -WE ARE VENUS-」をパフォーマンスした。

ああ、これが観たかった!このハツラツとした姿!堂々たるたたずまい!数の暴力!

私の求めたE-girlsが、私を助けて続けたE-girlsがそこにいた。後半のブレイクで各グループのダンスパフォーマンスでは、最初で最後の3人編成Dreamが強めの踊りをキメてくれる。こんなうれしい景色あるかよ。

19人のライブはおよそ90分弱。LDHギグ特有の大人数がステージ左右を行き来して繰り広げるイチャコラ感いっぱいなパフォーマンスをこれでもかと楽しめたし、ランニングマンなんかも披露してくれた。そしてメドレーではあったけれどEG史上最多幸感ソング「Mr.Snowman」含むシングル連発なんてのもうれしい。「次で19人最後の曲になります!」とDream Amiが言って始まった「Follow Me」を聴きながら、私は「うれしい!さみしい!でも、今までありがとう!」と万感の想いで満ちまくっていた。E-girls好きでよかった、ほんと。

で、フォロミーが終わったらスクリーン上に大きなダイアモンドが弾けて小さな粒になり、それがなぜか「PKCZ®」というエンブレムになるっつう映像が流れ、呼んでもないVERBAL、DJ MAKIDAI、DJ DARUMAの3人がせり上がってきてビタッとあふれる涙を止める。わけわかんねえオッサンから「声がちいさーい!」と叱られながら「さすがLDH」と笑った。

最後のE-girls第一章ギグのあとはDream Amiチャンのキュートなパフォーマンスを含む各グループのお披露目公演がひたすら続き、ラストに披露された新生E-girlsのパフォーマンスでは正直力尽きていた…けれど、私はもう前半の感動をしっかりと刻めたので、そのグダグダもなんとか愛した。私はここで降りるけれど、E.G.Family各位はこれからも輝いてほしいなと、まあE-girlsっぽい明朗な無責任さでそれなりに前途を祝した感じだ。

しっかりと最後を見届けたのはSAKEROCK以来か。生きていると目の前のいろんなものが終わっていくのを目撃してしまいます。この3年あまり愛したE-girlsとの蜜月があればこその今日を迎えた私は、自分というダイアモンドを磨きながら明日も輝いていきたいなと思うのであります。 

E.G. SMILE -E-girls BEST-(2CD+スマプラミュージック)

E.G. SMILE -E-girls BEST-(2CD+スマプラミュージック)

 

 

文学フリマ、襲いかかる文字をかきわけながらの交流体験

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「500円です。けれど、もし明日のことを教えてくれたら100円引きにしますよ」。唐突に言われて面食らったのと、まさに明日に対して最高にイヤイヤ期だったため拒否したんですよね。ってのを「ちょっともったいなかったかな」と反省するゴールデンウィーク最終日、文学フリマ東京の話。

コミティアで作り手直送の作品が面白いと知り、いろんな即売会に出向こうと考えてたら見つけたので出向いたのだけど、実際のところ文フリはだいぶ消耗した。まずマンガと違い、売られている文を検討するための試し読みが難しい。しかもティアと違って、きちんと製本されたものが多く1冊1冊もそれなり。そして、できる限りの検討を経て買ったものを読むと、いくつかはこれブログでいいのでは…という「テーマ<自分語り」のカルマ特盛りのきついやつだったりして。ようやく読み終えてこれを書いているけれど、ほんと疲れた。

全体的にそういう感じだったので、本のどうこうより冒頭のやり取りみたいなことを新鮮に覚えている。上の話はいつか床子@出版ユカコが匿名の13人に「最良の1日の食事」を尋ねたインタビュー集「別人帳」を買った際のもので、聞かれたときは正直「は?」と思ったけど、読み終えた今は納得がいく。選りすぐりの誰かの話が丁寧にまとめられた「別人帳」は、おそらく地道なヒアリングを重ね、厳選されたインタビューで形になったと思える読み応えのあるものだった。

ほかにも入手時に対話を求められたときがあった。寛野ひろみ@遊骨文庫の「不登校・ひきこもりからインターンへ 母が息子に学んだ六年半」は、ブースに行ったら筆者から「お代は結構です。その代わり、どうしてこちらに立ち寄って手に取ろうと思ったかを教えてくださいませんか?」と言われた。タイトルどおりのヘビーな内容を綴って世に放ったのには、おそらく彼女の「知ってほしい」「聞いてみたい」を満たしたかったからなんだろうなと思い、不思議な入手体験ができて新鮮だった。

即売会はとにかく苦手だ。人が多いのはいやだし、物色する様を見られるのが苦手だし。試し読みしながらがっかりするところなんて申し訳なくてしょうがない。それでも足を運ばせるものがあって、次回もきっとそういう感じになってしまうはずだ。